講演
環境色彩デザインと基礎デザイン学
吉田慎悟(カラープランニングセンター)
色彩は私達の周りにあるすべてのものと関係している。これらのすべてのモノの色彩を対象とする環境色彩デザインは、これまでのプロダクトデザインやグラフィックデザインと異なり、デザインの作品性やデザイナーの作家性を重視しない。そこではさまざまなモノの関係性を整えて快適な生活空間を創造していくことが必要とされる。
私は、これまで環境色彩デザインを基礎デザイン学の実践の場として捉え活動してきたが、そのような環境色彩デザインから今後のデザインのあり方を考えてみたい。
関係性あるいは総合性とデザイン
環境色彩デザインでは単体のモノの色彩の善し悪しよりも、それらが集合してつくる環境全体の質の向上を目指す。そのため環境を構成するすべてのモノの関係性を調整することが大切である。これまでのデザインは単体のモノづくりに偏り過ぎ、それらが使われる場をないがしろにしてきたのではないか。
地域性とデザイン
色彩は地域の気候・風土に密接に関係している。そのため環境色彩デザインでは地域に蓄積された個性を大切にする。モノを世界に流通させるために使われたこれまでのデザインは地域の個性をむしろ破壊する力として働いた。地域の個性は人々が生活する場にとってなくてはならないものであり、デザインは個性ある地域の再生に取り組むべきであろう。
社会性あるいは公共性とデザイン
環境色彩デザインは、社会資本としての公共の空間を整備するために生まれ育ってきた。公共空間を構成するものは国や県で管理する道路や公共建築物ばかりでなく、個人の家の外観や庭の植栽もその一部である。公共空間は最終的には行政がつくるものではなく、そこに暮らす人達がつくっていくものであろう。このような認識の中で環境色彩デザインは、地域の人達と協働する機会も増えてきた。さまざまなデザイン分野で、このような住民とのコラボレーションは、今後確実な流れとなっていくだろう。
(講演のサマリー)